腎臓内科とは
腎臓内科と聞いて最初に思い浮かべるのはおそらく透析治療でしょう。
腎臓の機能が著しく低下し、身体機能の調節がうまく維持できなくなった時に、腎機能の一部を補うための透析治療や腎移植が必要となります。
これらの治療は腎臓内科医の重要な役割の一環です。しかし、当院は透析や腎移植を行う立場にはありません。むしろ、そのような治療を回避することを目指し、腎臓を保護するための診断と治療を提供しています。
腎臓に影響を与える因子をそれぞれに特定し、腎臓と全身の健康を維持するための対策をご提案します。
腎臓内科が専門とする
病気・病態
- 尿検査異常(軽度~)
- 慢性腎臓病(CKD)
- 慢性(糸球体)腎炎
- ネフローゼ症候群
- 糖尿病性腎症
- 腎硬化症
- 急性腎障害
- 多発性嚢胞腎
- 膠原病などに伴う腎障害/腎性貧血
など
腎臓の機能が完全に損なわれると、透析や腎臓移植なしでは生命を維持することが難しくなります。
腎臓の役割
腎臓の役割は次の通りです。
- 血液をろ過し、不要な物質や毒素を尿という形で体外に排出する
- 血圧の調整
- 水分とミネラルの調整
- 骨およびミネラル代謝の調節
- 造血ホルモンの分泌と血液量の調節
主な腎臓病・病態
糖尿病性腎症 (DKD)
糖尿病の合併症のひとつに腎機能障害があります。
尿をろ過する「フィルター」のような存在である腎臓や、腎臓にある細い血管が障害され、腎臓全体の機能が低下する病気です。
初期の段階であれば、厳格な血糖コントロールによって腎障害の進行を遅らせることができますが、腎障害がある程度まで進行してしまうと、様々な治療を行っても腎機能の低下を阻止することは難しくなります。
慢性(糸球体)腎炎
年齢を問わず発症する病気です。慢性腎炎にはさまざまな病気がありますが、日本人に多く見られるのがIgA腎症です。
通常は自覚症状がなく、学校や会社の健康診断での尿検査異常(タンパク尿や血尿)がきっかけで診断されることが多くあります。確定診断は腎生検(腎組織の検査)によって行われます。
治療には病気とその重症度に応じて、ステロイド、免疫抑制剤、一部の血圧降下剤などが併用されます。早期発見と継続的な経過観察がとても重要です。
腎硬化症
腎臓に張り巡らされた中小血管が動脈硬化によって狭くなり、血流が悪化し、その部分の腎組織の機能が徐々に失われる病気です。
動脈硬化の原因は加齢、高血圧、喫煙など様々ですが、通常はこれらの要因が複合的に影響し合い、病態が進行します。
そのため、検診などの機会に病歴や画像検査などから早期に診断を下し、原因に応じた適切な治療を行うことが大切です。
多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎の発症は、遺伝的要因と密接に関連しています。
水風船のような形状をした嚢胞(のうほう)が両腎(時には肝臓や他の臓器にも)で成長して腎臓の正常組織に影響し、最終的には腎不全(腎臓の機能低下)に至ります。孤発性といって、遺伝的背景がよくわからないケースもあり、その遺伝様式や発症様式は様々です。
目で見てわかる血尿、発熱、腹痛などの自覚症状が診断のきっかけとなることもありますが、健康診断で偶然発見されることもあります。
心臓弁膜症や脳動脈瘤などの合併症リスクの高さが指摘されており、適切な診断と全身の精密検査が推奨されます。
現段階では特効薬はありませんが、定期的な経過観察により腎不全の進行を遅らせ、脳出血などの合併症の重症化を防ぐことが期待できます。
自己免疫疾患(膠原病)
腎臓は、多様な組織や細胞が複雑に絡み合って構成された臓器です。
その構成には、血管とその支持組織、尿をろ過するフィルターとそれを繋ぎとめる結合組織、そして尿の成分を調整する細胞などが含まれています。
腎臓に関連する自己免疫疾患(膠原病)は、これらの機能に対する「過剰な免疫反応」が腎臓に与える悪影響により引き起こされる病気です。
膠原病は多岐にわたり、特に全身性エリテマトーデス(SLE)とANCA関連血管炎は一般に広く知られています。
これらの病気には早期の診断と治療が極めて重要です。
ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤などを必要に応じて併用することで、病態を穏やかな状態(寛解)に維持し、腎機能障害の進行を抑えることが可能です。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群の診断は、「尿中タンパク排泄量が1日3.5g以上、血清アルブミン値が3.0g/dl未満の低アルブミン血症」の場合に判定されます。これは尿中に多量のたんぱく質が流され、血中のタンパク濃度が低下し、全身のむくみ(浮腫)が現れる状態です。
ネフローゼ症候群の原因は多岐にわたります。原因不明のもの(微小変化型ネフローゼ)から、感染症、膠原病、血液疾患(多発性骨髄腫など)、悪性腫瘍まで、ネフローゼ症候群は多くの病気との関連が指摘されています。
ネフローゼ症候群の全体像は、患者様の病歴、血液検査、画像検査、さらには合併症や腎組織検査(腎生検)なども考慮して総合的に把握します。
症状としてはむくみ(浮腫)のみで、あまり自覚症状を感じない患者様も珍しくありません。
しかし、腎機能障害、感染症、血栓塞栓症、出血性疾患(血液凝固機能異常)などのリスクが高く、非常に重篤な病気と考えられますので、早めの受診をお勧めします。
ネフローゼ症候群の治療は「原因となる病気の治療」が原則ですが、原因不明の場合や病態によっては、ステロイド薬、降圧薬、利尿薬などを組み合わせて治療を行います。